浜松科学館ニューズレター「COMPASS」。
第27号の表紙は、館内3Fで展示しているプラネタリウム投影機「興和プラネタリウムI型」と映る天文チームの皆さんです。
この投影機は、浜松科学館の前身である「浜松市児童会館」で使用されていました。現存する世界に一台のみの貴重な投影機です。

…プラネタリウム(蒲郡市の興和光機製)は浜松ライオンズクラブなどの寄付により設置されたもので、天井は直径十メートルのドーム型をしており、冷暖房が完備していたので、快適に見る(一回三十分)ことが出来た。
(浜松市立中央図書館/浜松市文化遺産デジタルアーカイブ より)
天文チームの一人である島田さんは、次のように話します。
島田さん「この投影機はドーム手前のホワイエ(待機室)に展示しています。恒星はレンズ投影式、惑星はプリセット方式が採用され、その仕様の中では国産初となるプラネタリウムです。来館者の中には児童会館の時代を知っている方もいて、懐かしさや親しみを感じていただける機会になっているのかなと思います。」

現在、浜松科学館には一球式の「ケイロンⅢ」という投影機が設置されており、およそ1億個の、満天の星を映し出すことができます。解説員がその場でその日見える星空を解説する「生解説」のスタイルと合わせて、皆さんに星の面白さを感じていただけることを目指しています。


島田さん「プラネタリウムの魅力は、いろんな空が見られることだと思います。今やっている生解説番組(春の星旅)のように、オーストラリアやボリビアに行きましょう!みたいな旅もできるし、雨が降っていても星空が見えるし、山奥も行けるし、街中も行けるし…みたいなタイムスリップができるのが面白いですね。ただ、このような瞬時の移動ができるのは最近の投影機になってからで、古い投影機は歯車をたくさん使っているので、何時間もかけて見せたい日時・場所の星空に合わせています。日本の高い技術力による進歩を感じます。」

2023年〜2025年は、光学式プラネタリウムがドイツで誕生してから100周年の年でもあります。その最後を飾る企画として、JPA(日本プラネタリウム協議会)主催のもと、5月24日に全国一斉グランドフィナーレイベントが開催されました。
浜松科学館もこれに参加しました。日本全国のプラネタリウム館で同時刻に同じ星空を映し出し、複数人の解説者がオンライン上で星空解説をつないでいく「全国リレー投影」などを行いました。
島田さん「全国一斉イベント自体はJPAからの連絡を受けたことがきっかけなのですが、この機会に、皆さんにプラネタリウムにより興味を持っていただけたらと思い、前半にオリジナル企画も加えることにしました。日本はプラネタリウム大国といわれるほど、文化としてプラネタリムが根付いている国でもあります。今回は投影機にスポットを当てて、100年の歴史の中でドイツでのツァイスの開発を起源に、日本で発展してきたプラネタリウムについてお話ししました。当館の“興和プラネタリウムI型”や現在の投影機”ケイロンⅢ”の解説をした後、ガイドツアーも行いました。参加された方々が、近くで投影機やコンソールを見ることができてよかった!と笑顔でお話ししてくださり、楽しんでいただけたようで本当に嬉しかったです。」



島田さん「私は、その人の興味にかかる“何か”を見つけてもらえたらというのはいつも考えていて、今回の100周年企画もその一つになればと思います。たとえば投影機の仕組みを知って機械工学やレンズの解説が光学を知るきっかけになるとか、映し方を知ってプログラミングに興味を持つとか、プラネタリウムを入口にして、その人の未来がより広がっていくものになると嬉しいです。」
100周年を迎え、今後さらに幅広い利用がされることが期待されるプラネタリウム。
島田さん「プラネタリウム解説員は、過去の発見や物語とか、これまでに語り継がれてきたもの、新たに発見・解明されたこと、日々起こる天文現象などをたくさんの人に伝えていく仕事だと感じています。相手を意識した話し方で、事実をきちんとお届けすることを心がけています。“ワクワクする”とか、“癒やされる”に加えて、“なんでだろう?”という疑問が生まれるような場所でもあると良いですね。観た後はぜひ、本当の空で星を探してみてください。」
