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夜の科学館

夜の科学館:音楽と科学

夜の科学館サイエンストーク_202601_1

浜松科学館では月に一度、高校生以上を対象に「夜の科学館」を開催しています。開館時間を延長し、常設展をご覧いただけることに加え、毎月異なるテーマでプラネタリウムやサイエンスショーなどを実施しています。今年度の大テーマは「日本文化と科学」。慣れ親しみのある日本の文化と、科学がどのように結びつくのかお楽しみください。本ブログでは、毎月のプログラムの内容の一部をご紹介します。

1月のテーマ『音楽』

音楽と科学はあらゆる点でつながっています。音のしくみを科学的に説明できるだけでなく、音楽を保存して好きな時間に、好きな場所で再生するレコードやCDも、科学技術の結晶です。とはいえ、音楽は科学が発展する遥か昔から人類とともに歩んできました。1月の夜の科学館は、文化と科学をつなぐ「音楽」をさまざまな角度からとらえたプログラムを開催しました。

〇でんけんラボ「楽器の弦」

楽器は古くから日本、そして世界で親しまれてきました。今回紹介する三味線やピアノに注目すると、ピアノは18世紀、三味線は沖縄の三線を起源として16世紀くらいには誕生しています。そんな楽器の音を発する最も重要な部品の一つ:弦を拡大することで、どんな科学が見えてくるのでしょうか。

三線とピアノのイラスト

まずはピアノの弦を観察してみましょう。少し違和感がある人もいるかもしれませんが、ピアノは弦楽器です。鍵盤を押すとハンマーが動き、内部に張られた弦を叩きます。

下の画像は、どちらもピアノの弦の電子顕微鏡画像です。

ピアノ弦高音35倍
ピアノ弦低音35倍

左が低音の弦、右が高音の弦です。比べてみると、高音弦は一本の細い線ですが、低音弦は線に別の2本の線が巻きつき、とても太いです。

弦楽器の音の高さは、長さと太さによって変化します。弦が長ければ長いほど、太ければ太いほど、音は低くなります。弦の長さに合わせてピアノ自身の大きさを無限に大きくすることはできないため、低音弦を太くすることで低音を表現して、音階を成立させているのですね。

一般的なピアノには白鍵が52本、黒鍵が36本あります。ということは、弦の本数は白鍵と黒鍵の合計本数で88本あるのかというとそうではなく、200本以上の弦が存在します。上記のとおり、低音の弦は音を低くするために太くなっており、それに付随して音が大きくなります。すると相対的に音の大きさは高音の弦で小さくなりますので、それを補うために中音から高音にかけて1音に2本や3本の弦が使われています。

三味線には名前のとおり3本の弦が張られています。それぞれ1の糸・2の糸・3の糸と呼ばれ、1の糸は太く低音、3の糸は細く高音、2の糸はその中間です。

ここでは1の糸を拡大すると、細い糸の束で、それぞれの糸の断面は三角形でした。これはカイコが作る絹糸の特徴です。

三味線の弦の素材は、伝統的な絹糸と、新しいナイロン、テトロンがあります。やはり絹糸で最も昔ながらの三味線の音色が出る一方で、強度が低いため細めの2の糸、3の糸ではナイロンやテトロンを使用することが主流なのだそうです。

絹糸100倍
絹糸断面1000倍

通常はその美しい音色に注目しがちですが、今回はその楽器の弦に着目してみました。そこには伝統的な素材の歴史と物理学的な性質がかかわっていました。本物のピアノや三味線を見る機会がありましたら、ぜひ弦の様子を観察してみてください。

協力(資料提供):河合楽器製作所、吉田屋琴三味線店

〇特別投影「ミュージック・プラネタリウム」

1977年、外惑星―木星・土星・天王星・海王星―の探査と、太陽系外の未知の領域の観測を目的として、惑星探査機ボイジャー1号・2号が打ち上げられました。
惑星の詳細な映像の取得や、多くの衛星の発見など、その科学的功績は計り知れません。
そんなボイジャーには、「ゴールデンレコード」と呼ばれる特別なレコードが搭載されています。素材は銅板に金メッキを施したもので、まさに“金のレコード”です。

ゴールデンレコード

このレコードには、地球に生命や文化が存在することを伝えるため、世界各国のあいさつ、音楽、画像などが収められています。
ボイジャーは惑星探査を終えた後も、宇宙空間を飛び続けています。いつか他の知的生命体がこれを発見し、地球という星の存在を知るかもしれない、そんな壮大で夢のあるプロジェクトなのです。

ジャケット

こちらはゴールデンレコードのジャケットの写真です。一見すると暗号のようにも見えますが、そこにはレコードの再生方法が図で示されています。
右上にはレコードを真上から見た図が刻まれています。
その下には、円盤を真横から見た断面図と、再生に使うレコード針、さらに針を取り付けたカートリッジの図が描かれています。
また、再生は一番外側の溝から始めることも説明されています。
左上には回転数や回転速度が示されており、文字を使わず、図だけで再生方法が理解できるよう工夫されています。

では、レコードの内容を少し詳しく見てみましょう。
まず、世界各国のあいさつが収録されています。
日本語では、「こんにちは。お元気ですか。」という言葉が選ばれました。
英語では、
「Hello」(一般的なあいさつ)
「Greetings to the Universe」(宇宙全体への呼びかけ)
「We greet you from planet Earth」(地球からのメッセージ)
といった表現が収められています。

音楽もまた、多彩です。
ロック、クラシック、民族音楽など、地球の文化の幅広さを伝える曲が選ばれました。
日本からは、尺八の代表的な曲である「鶴の巣籠り(巣鶴鈴慕)」が収録されています。
このゴールデンレコードは、「今の地球」から宇宙へ向けたメッセージです。
いつか地球外知的生命体や、遠い未来の人類がこれを見つけ解読してくれたら、そう想像すると、とてもわくわくしますね。

最後に、収録されている音楽の一例はこちらです。

作者 演奏者 ジャンル 収録時間
ドイツ ブランデンブルク協奏曲第2番ヘ長調 第1楽章 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ ミュンヘン・バッハ管弦楽団 指揮者 カール・リヒター オーケストラ 4:40
インドネシア Puspawarna(Kinds of Flowers)章 Court gamelan of Pura Paku Alaman directed by K.R.T. Wasitodipuro ガムラン 4:43
オーストラリア モーニング・スター(Morning Star)、デビル・バード(Devil Bird) アボリジニの歌 1:26
メキシコ エル・カスカベル(El Cascabel) ロレンソ・バルセラータ ロレンソ・バルセラータ&マリアッチ・メヒコ 3:14
アメリカ合衆国 ジョニー・B・グッド チャック・ベリー チャック・ベリー ロックンロール 2:03
日本 鶴の巣籠り(巣鶴鈴慕) 山口五郎 尺八本曲 4:51
オーストリア、ドイツ 「魔笛」から「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト エッダ・モーザー(ソプラノ)、バイエルン国立歌劇場、ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮) オペラ 2:55
ペルー コンドルは飛んでいく ダニエル・アロミア・ロブレス バンパイプ 0:52
アメリカ合衆国 メランコリー・ブルース ルイ・アームストロング ジャズ 3:05
ドイツ、カナダ 平均律クラヴィーア曲集第2巻から前奏曲とフーガ ハ長調 BWV 870 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ グレン・グールド ピアノ 4:48

ぜひYouTubeなどで検索して、実際に聴いてみてください。

〇特別サイエンストーク「日本人は「目に見えないもの」をどうみてきたか
ーー琵琶法師、座頭市、そして小泉八雲(講師:広瀬浩二郎氏)」

みらいーらステージでは、国立民族学博物館の教授、広瀬浩二郎氏にサイエンストークを行っていただきました。13歳の時に失明し、全盲となった広瀬先生は現在、触文化についての研究や普及、ユニバーサルミュージアムの実践などをすすめる研究者です。今回のトークテーマである、琵琶法師や瞽女(ごぜ)といった盲目の旅芸人に関する研究は、広瀬先生の研究の原点でもあります。

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日本を旅しながら人々に音楽を届けた琵琶法師。居合切りの名人 座頭市。
目が見えないことは、想像もつかないほど大変なことなのではないかと思ってしまうのですが、広瀬先生の考え方は少し違います。広瀬先生は視覚に頼らない分、聴覚や触覚を鋭く研ぎ澄まして、周囲の情報を捉えています。白杖を使って歩くときも、床にあたる感触や反響音のわずかな違いを感じ取っているそうです。琵琶法師の演奏が人の心に響いたのは、研ぎ澄まされた聴覚によって得られた音や体験が、唄にこもっていたからかもしれません。

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博物館の展示物は、「壊れないよう、見るだけ」になっていることが少なくありませんが、広瀬先生は博物館の展示に触れ、形や素材を肌で感じる「触文化」の大切さを提唱しています。見るだけでは味わえない、モノの温度、手触り、モノとの距離感があるからです。

3月20日(金)からはじまる特別展「ユニバーサル・ミュージアム “みる”がひろがるみらいーら」では、触って楽しめるたくさんのアート作品が展示されます。見ても、見えていなくても楽しめる新しい特別展で、みなさんの“みる”を広げてみませんか?

春の特別展「ユニバーサル・ミュージアム “みる”がひろがる みらいーら」

ユニバーサル・ミュージアム

来年度の夜の科学館は毎月第4土曜日開催となります。4月25日(土)は、特別展も開場する予定ですので、ぜひお越しください。皆様のご来館をお待ちしております。

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夜の科学館でんけんラボ_202601
夜の科学館体験_202601
夜の科学館MiteMite_202601
夜の科学館星空観察_202601
夜の科学館カフェ_202601

イベント名:夜の科学館
開催日:2026年1月9日(金)