「MENKA Fair」浜松と綿花とものづくり

浜松は、南には暖かい黒潮が流れる海が広がり、とても温暖な気候です。また、広く平らなところは、天竜川の上流から流れてきた土や砂が集まってできた扇状地で、水はけがよいことが特徴です。このことから浜松はワタを育て綿花を収穫するのにとても良いところです。

浜松科学館サイエンスパークの一角に、サイエンス農園があります。ほんの30㎡ほどのスペースですが、8つほどの畝(うね)をつくることができます。科学館スタッフで畑を耕し、綿花を作っています。

綿花の種名は「ワタ」。植物図鑑によるとアオイ亜科ワタ属に属し、多年草とされていますが、日本を含む温帯地域では一年草として扱われています。私たちは、「ガラ紡愛好会」様より提供いただいた、貴重な和綿(わわた)のタネを5月下旬に植えました。
※「ガラ紡愛好会」Webサイト:https://garabo.jimdofree.com/

暖かくなる5月下旬に種まきができるように、4月の下旬には、土づくりを行います。浜松だと5月中旬から下旬ごろに種まきを行い、雨が多くなる6月には支柱を立てます。7月にはフヨウやハイビスカスに似た黄色の花を咲かせ、青い実がなり、9月にはフワフワとした白い綿花を収穫することができます。

2022年4月 土づくり
6月 支柱をたてる
7月 開花
8月 結実
9月 実がはじけて綿花がひろがる

浜松では江戸時代中頃から綿花栽培が盛んとなり、繊維産業が発展しました。それに伴い、織機の製造が行われ、その技術が、補助エンジン付きの自転車やオートバイ、楽器などの開発につながって、今日の「ものづくり浜松」の礎となっています。

今回、「ものづくりのまち・浜松」の始まりともいえる綿花を身近に感じてもらうイベント「MENKA Fair」を開催しました。

〇ワークショップ

サイエンス農園で収穫した綿花を使って「わたうさぎ」「つるし雛」「ミサンガ」づくりを行いました。

種をとって”わたうさぎ”

「わたうさぎ」作りでは、まず「綿繰り機(わたくりき)」という木製の機械を使い綿花の種子をとる体験を行いました。ハンドルを回すと2つのローラーがかみ合い、回転し、ワタ毛を巻き取り、種子を取り除いてくれる仕組みです。参加された方は、「この機械、すごい!」と種子が取れる様子を楽しんでいらっしゃいました。

綿繰り機を使って種取り体験

綿の実で”吊るし雛”

早春の時期にピッタリの「つるし雛」を作りました。ワタの実を胴体に使ったお雛様とお内裏様にお好みの着物を着せてわっかに貼り付けます。さらに、ワタの実をヒモにくるっとまきつけてボンドでとめればフワフワの玉飾りに。みなさんそれぞれのつるし雛を完成させていました。

糸を紡いで”ミサンガ”

「ミサンガ」作りでは、綿花から糸を紡ぐ体験を行いました。糸は繊維がより合わさったもの。「スピンドル」というコマのようなものに、繊維を整えた綿をひっかけて回転させると糸ができます。
「スピンドル」という名前を聞くと、何か特別な機械のように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。棒の上部に糸が引っかかる金具と回転盤がついているものです。

このように綿に撚りをかけると糸になりますが、右回りに撚ったものが「S撚り」、左回りに撚ったものが「Z撚り」の糸です。これは側面からみえる斜線の向きから見分けることができ、S撚りのものは手縫い糸や手芸糸に、Z撚りのものはミシン糸に使われます。

では、綿糸を大きく拡大してみてみましょう!下の写真は電子顕微鏡で300倍に拡大した画像です。形状は平たく、1本1本に自然な撚りがかかっていることがわかります。これは中心部分にあった細胞液が乾燥してなくなり、空洞になるため自然な撚りができるのです。また、中心部分が空洞であることにより空気の層を保つことができ冬は温かく、夏は汗を吸収し涼しく感じられます。このような綿糸の性質により綿織物は体温調節しやすく着心地が良いため重宝されてきたのですね。

綿糸を電子顕微鏡で300倍に拡大した画像

〇紙芝居

「MENKA Fair」開催期間中、みらいーらステージでは「浜松 綿花とものづくり」と題した、スタッフ「やまちゃん」手作りの紙芝居もご覧いただきました。綿花を使った工作を楽しみながら、綿花と浜松とのつながりやその歴史を知っていただけたのではないかと思います。

今年度もサイエンス農園で綿花をつくる予定です。ご来館の際には、綿花の成長の様子もぜひお楽しみください。

また「MENKA Fair」をきっかけにタネを手にした方がたくさんいらっしゃったかと思います。まいたタネから芽が出た、花が咲いた、実がなった、ワタができた!などの変化がありましたら、科学館スタッフに教えてくださいね。

イベント名:「MENKA Fair」
開催日:2023年2月18(土)、19(日)、23日(木・祝)、25(土)、26(日)
担当者:やまちゃん、みしまん、おおどう
参考資料:イチからつくる ワタの糸と布/編:大石尚子・絵:杉田比呂美
ワタの絵本(そだててあそぼう)/ひびあきら、やまだひろゆき
株式会社 フジックス https://www.fjx.co.jp/learn/knowledge02.html

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