夜の科学館:ヒカリを知ろう・感じよう

浜松科学館では月に一度(毎週第2金曜日)、高校生以上を対象に「夜の科学館」を開催しています。開館時間を延長し、常設展をご覧いただけることに加え、プラネタリウムやサイエンスショーなど、昼間の科学館とは趣の違う大人の方向けのプログラムを実施しています。今年度の夜の科学館では「大人がワクワクする科学館」を目指して、毎月異なるテーマを設定し、さまざまなコンテンツをご用意しました。本ブログでは、科学館ならではの切り口で毎月のテーマと科学の関わりを紹介します。

8月のテーマ『光』

「光」は日常にありふれており、私たちの生活に無くてはならない存在ですが、その仕組みや性質まで考えることは少ないのではないでしょうか。今月はサイエンスショーやプラネタリウムに加えて、夏の特別展「これって光?キラっとライトな10の実験」の解説ツアーを実施しました。光について知ることで、いつもの風景の見え方が変わるかもしれません。

〇サイエンスショー「ライト・オブ・サイエンス」

2007年に一般家庭用LED照明器具が販売されて以来、LEDは、私たちの生活にすっかりなじみのものとなりました。 LEDは「Light Emitting Diode」の頭文字をとったもので、発光ダイオードとも呼ばれます。今回はLEDが光る仕組みについて見てみましょう。
LEDを拡大してみました(写真1)。

写真1

写真の左側がプラス極(アノード)、右側がマイナス極(カソード)です。カソードの中央をよく見てみると、お椀状のくぼみがあります。この中に、ダイオード(LEDチップ)がついています。

LEDチップは、基板の上にP型半導体とN型半導体がくっついたものです。P型半導体は電子が不足した状態で存在し、電子が入る穴「ホール」があります。一方、N型半導体には電子が余っている状態で存在しています。(図1)

図1

LEDチップに順方向(プラスからマイナスへ電流が流れる)の電圧をかけると、LEDチップの中をホールと電子が移動し、電流が流れます。移動の途中でホールと電子がぶつかると結合し、その時に生じたエネルギーが光のエネルギーに変換され、発光します(図2)。

図2

一度結合したホールと電子ですが、すぐに外れて次の電子と結合します。これを繰り返すことで、LEDは光り続けます。半導体そのものが発光するため、消耗しづらく、長持ちします。

半導体を構成する化合物には、Ga(ガリウム)、N(窒素)、 In(インジウム)、Al(アルミニウム)、P(リン)などがあり、放出される光の波長が異なります。この波長の違いが、LEDの発光色を決めているのです。そして、開発が難しかった「青色」を発する窒化ガリウムの結晶化に成功したのが、2014年にノーベル物理学賞を受賞した赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏の3人です。天野先生、青色LEDを紹介した展示物が光ゾーンにあります。そちらもぜひ、御覧ください。

LEDの発色と波長 (表1)

〇 プラネタリウム「オーロラ」

8月にオーロラの話なんて季節外れだと思いませんか?
オーロラと言えば寒い時期というイメージがあるかもしれませんが、オーロラを見るためには寒さは関係ありません。

では、オーロラを見るために良い場所はというと

1.オーロラベルトと呼ばれる緯度60~70度くらいの場所
2.晴天率が高いこと
3.暗いこと

これらの条件が揃っている場所が、たまたま寒い場所なのです。
南極圏でもオーロラは見られますが、行くことが難しいため、行きやすい北極圏の方が見やすい場所となります。
北極圏では8月後半頃から太陽が一日中沈まない白夜が終わるので、オーロラが見られるようになります。
オーロラが見られる場所では、あまり「オーロラ」とは呼ばないそうです。北極圏では「ノーザンライツ」、南極圏では「サザンライツ」と呼ぶのが一般的です。

「オーロラ」の正式名称は「オーロラ・ボレアリス」といい、主に学術用語として使われます。「オーロラ」という名前をつけたのは、イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイという説がありますが、諸説あります。「オーロラ」とはギリシャ神話に登場する太陽の神アポロンの妹で、暁の女神・夜明けの女神です。アポロンを先導して夜明けを知らせます。

そして、オーロラは太陽と深い関係があります。太陽からやってくる太陽風(電気を帯びた粒子)が地球の大気中の酸素原子や窒素原子と衝突することでオーロラが発生します。特に太陽表面の爆発(フレア)が起こるとたくさんの太陽風が発生し、オーロラが発生しやすくなります。太陽からやってきた太陽風は地球の磁場というバリアに阻まれ、バリアに沿って移動します。そして、磁力線に沿って北極圏や南極圏に侵入し、大気中の酸素原子などに衝突してオーロラが発生します。

オーロラが光る理由を人間に例えてみましょう。
①外的要因(太陽風)が人間(酸素原子など)を刺激します。
②人間(酸素原子など)にどんどんストレス(エネルギー)がたまります。
③元の状態に戻ろうとストレス解消した際に出たストレス(エネルギー)が光となって放出されます。
④ストレス解消してスッキリして元の状態に戻ります。

この過程で放出された光がオーロラです。
このようにオーロラは太陽の活動が激しくなるとフレアなどが頻繁に起こり、大量の太陽風が地球にやってきてオーロラが起こりやすくなります。

今年2023年は太陽活動が活発ですので、オーロラを見るチャンスです。海外旅行の制限が解除・緩和され、ようやく海外へ行きやすくなってきましたので、機会があれば本物のオーロラをご覧ください。

科学の視点から見た「光」の話はいかがでしたでしょうか?このほかにも、ミニワークショップの実施や、ミュージアムショップにてオーロラグッズの販売を行いました。

イベント名:夜の科学館
開催日:2023年8月11日(金)毎月第2金曜日
参考資料:
・『子供の科学サイエンスブックス よくわかるLED・発光ダイオードのしくみ』 伊藤尚未著 2015年 誠文堂新光社
・「LEDの基礎知識 パナソニックのLED」 https://www2.panasonic.biz/jp/lighting/led/basics/
・「オーロラ50のなぜ」名古屋大学 https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/50naze/aurora/