夜の科学館:音を楽しむ

浜松科学館では月に一度(毎週第2金曜日)、高校生以上を対象に「夜の科学館」を開催しています。開館時間を延長し、常設展をご覧いただけることに加え、プラネタリウムやサイエンスショーなど、昼間の科学館とは趣の違う大人の方向けのプログラムを実施しています。今年度の夜の科学館では「大人がワクワクする科学館」を目指して、毎月異なるテーマを設定し、さまざまなコンテンツをご用意しました。本ブログでは、科学館ならではの切り口で毎月のテーマと科学の関わりを紹介します。

10月のテーマ『音楽』

皆さんは普段、どんな音楽を聴きますか?ポップスやクラシック、ジャズ、J-POP、K-POPなど、音楽にはさまざまなジャンルがありますが、どの音楽にも欠かせないのが、音を出すための楽器です。楽器や人の声は、どうやって音を出しているのでしょうか。今月は、科学の視点を通して音楽を楽しむプログラムを実施しました。

〇展示ツアー「音」

常設展示「音ゾーン」前の通路には、日本の3大楽器メーカーを設立した偉人のパネルが設置されています。3社が浜松市に本社を置くことから、浜松は「楽器のまち」と呼ばれています。
音ゾーンでは、楽器に欠かせない「音」について、実験を通して学ぶことができます。

音の正体は、ものが振動することで発生する「波」です。
例えば太鼓を叩くと、張られた皮が振動して周りの空気が押し出され、圧力の差(=疎密)が生まれます。この疎密が波のように空気中を伝わり耳の鼓膜を震わせることで音が聞こえます。

ばねを使った音の波(縦波)の再現実験

縦波は波の進行方向と平行に振動が伝わっていきます。動画ではばねの伸び縮みが端から端へと伝わっていく様子が観察できます。音も、空気から空気へと振動が伝わることで進んでいきます。

楽器は、音を出す原理によって5つに分類されます。
木琴やカスタネットのように、楽器自体が震える「体鳴楽器」。
太鼓のように、楽器に張られた膜が震える「膜鳴楽器」。
ギターやバイオリンのように、弦を震わせる「弦鳴楽器」。
フルートやハーモニカのように、楽器の周囲の空気を震わせる「気鳴楽器」。
テルミンや電子ギターのような、電気を用いて音を出す「電鳴楽器」の5つです。
弦をたたいて音を出すピアノは、弦鳴楽器に分類されます。また、人の声は声帯を使って周囲の空気を震わせて音を出すため、気鳴楽器に分類することができます。

音を構成する音程、音量、音色を「音の3要素」といいます。
音程は1秒間に繰り返す波の回数(=周波数)によって変化します。また、音量は波の大きさによって変化します。例えば、弦鳴楽器であるピアノやギターは、弦の長さや張り具合で音程を、弦を弾(はじ)く強さで音量を変えています。
音色の異なる音は、同じ音程、音量の音でも聞こえ方が異なります。音色は複雑な要素によってできていますが、その一つが「倍音」と呼ばれる、基本となる周波数の整数倍の周波数の音です。楽器によって倍音の組み合わせが異なるため、さまざまな音色が生まれるのです。

常設展示「弦の動き」

電気を用いて音を出す電鳴楽器は、近現代になって急速に発展した技術です。音楽制作が誰でもできる身近なものになりました。これは、電子楽器をデジタル信号で制御するために、ローランド株式会社を中心に国内外の楽器メーカー6社が協力して作ったMIDI(Musical Instruments Digital Interface)規格によるもので、その後の電子楽器の発展に大きく貢献しました。

常設展示「電子楽器の世界」…演奏によって画面が変化する

音ゾーンでは、他にもさまざまな音に関する技術を体験できます。ご来館の際は、浜松と音のつながりを感じてみてください。

〇サウンド・オブ・サイエンス

皆さんはどうやって音を聞いているでしょうか。
もちろん耳で聞いているのですが、もう少し詳しくみてみましょう。
耳の仕組みは下の図のようになっています。

そもそも音の正体は、ものが振動することで発生する「波」です。
例えば、スピーカーから出た音は、空気を振動させます。振動した空気が外耳から入り、鼓膜が震えます。鼓膜が震えると耳小骨が震え、脳に信号が送られます。このシステムで私たちは音を認識しています。

最近、「骨伝導」という言葉も一般的になってきました。例えば、「骨伝導イヤホン」です。

骨伝導イヤホン

このイヤホンは耳の中にイヤホンを入れるわけではなく、外に振動板があります。
音楽を流すと、外の振動板が震え、鼓膜を通さずに直接、耳小骨を震わせ、音を聞くことができます。

かんたんにできる骨伝導の実験をご紹介しましょう。
両耳を指でふさぎ、口に割り箸をくわえます。割り箸の先をスマートフォンやラジカセなどスピーカー部分に当てます。

この状態で音を流すと、いつもとは違う不思議な感じで音を聞くことができます。ぜひ、試してみてください。

最後に、問題です。
録音した自分の声を聞いてみると、ずいぶん違って聞こえます。どうしてでしょうか。
答え:私たちは自分の声を、外から聞こえる空気振動で鼓膜が震える音と、内側から直接聞こえる骨伝導の音をあわせて聞いています。録音した声には、骨伝導で聞いている自分の声が含まれていないので、違った声に聞こえているのです。

〇何でできてる?バイオリンの弓

バイオリンが誕生したのは16世紀中ごろ。今から400年以上前の出来事でした。当時用いられていた弦はガット弦と呼ばれ、素材にヒツジの腸が使われていました。時代とともにスチール弦やナイロン弦が登場し、メンテナンスのしやすさ、音色や弾き心地、価格などさまざまな観点から演奏者の好みによって、どの素材を使うかが選ばれます。

一方で、バイオリンの弓の素材は現在まで変わっていません。
果たしてどんな素材が用いられているのでしょうか?
電子顕微鏡で見てみると…

表面に縞模様があることが分かります。
これは毛小皮(キューティクル)。哺乳類の毛に特徴的な表面構造です。
バイオリンの弓の素材には「馬」の尾の毛が用いられてきました。

演奏する際は、ここに松脂(まつやに)を塗ります。

毛の上半分に松脂を塗った状態です。
松脂の細かい破片がまんべんなく張り付いています。
この凹凸が弦に絶え間なく引っかかることで、弦が細かく振動して美しい音色が奏でられるのです。

馬は古くから人間の家畜として身近な存在であり、馬の尾は他の哺乳類の毛と比較してとても長く、弓の素材として使い勝手が良かったと考えられます。しかし、理由がそれだけならば、弦と同じようにヒツジの腸を使ってもいいはずですし、スチールやナイロンを使うようになってもよさそうです。

試しにナイロン弦に松脂を塗ってみると…

松脂はあまり付着しませんでした。
おそらくナイロン弦には馬の毛のキューティクルのような凹凸が無いために、松脂が上手く付着しなかったのでしょう。
弾力性やメンテナンスのしやすさなど、他にもメリットがあると思いますが、キューティクルという生物学的な表面構造が、現在もバイオリンの弓に馬の毛が使われる理由の一つになっているようです。

〇懐メロプラネタリウム

プラネタリウムにBGMは欠かすことができないものです。
今回は浜松科学館が開館した1986年から現在まで、当時のヒット曲をBGMにして当時見られた天文現象などをご紹介しました。その一部をご紹介します。

1896年
BGM 「CHA-CHA-CHA」石井明美
5月1日に浜松科学館が開館しました。
当時のロゴマークは1986年と深い関係があります。1986年に有名なハレー彗星が地球に接近しましたが、そのハレー彗星をイメージして作られました。

ハレー彗星は平均すると76年周期で太陽の周りを回っていますが、単純に1986年に76年を足し算して求めることはできません。大きな惑星の重力が、彗星が公転するたびに軌道周期を少しずつ変えていくからです。次に地球に接近するのは2061年と予想されています。

2001年
BGM 「天体観測」BUMP OF CHICKEN
毎年、何回か流れ星がたくさん流れる日があります。特定の星座の方から流れてくるようにみえるため、その星座の名前をとって「〇〇流星群」と呼ばれます。
流星群は、通常1時間に数十個程度流れますが、この年の「しし座流星群」は1時間に数千個流れ、雨のように流れ星が降り注ぐ「流星雨」となりました。
しし座流星群は33年ごとに大出現する傾向があるため、次に大出現が期待されているのは2034年ごろとなります。

2009年
BGM 「Believe」嵐
この年、浜松では太陽が70%以上欠ける日食がありました。
奄美黄島などでは、太陽全体が隠れる皆既日食が見られました。
次回、日本の一部(長野市など)で皆既日食が見られるのは2035年で、浜松でも90%以上欠けます。

2010年
BGM 「流星」コブクロ
2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰って来ました。
数々のトラブルを乗り越えて、小惑星「イトカワ」のサンプルを持ち帰った「はやぶさ」は大きな感動を呼びました。
サンプルを地球に投下したあと、自身は大気圏に突入して燃え尽きた姿に涙された方もいました。

2018年
BGM 「Lemon」米津玄師
この年、火星がとても明るく見えました。
火星は地球のすぐ外側を回っている惑星です。内側に位置する地球の方が早く太陽のまわりを回っているため、約2年2ヶ月ごとに地球が火星を追い抜きます。その際に地球と火星が近づくため、火星が明るく見えます。
ただ、地球の軌道に比べて火星の軌道は少しつぶれた楕円形をしているため、接近時の距離は毎回異なります。
2惑星間の距離が近い場合は「大接近」と呼ばれます。
2018年は「大接近」となりました。2018年よりも近づくのは2035年です。

最近Z世代でTikTokなどをきっかけにして、かつての人気曲がリバイバル・ヒットしています。
ファッションの流行も繰り返すと言われ、現在は「Y2K」と呼ばれる2000年代に流行していたファッションが流行っています。
太陽系の惑星や彗星などの天体も太陽の周りを回っているため、周期性があります。
そのため、今回ご紹介した天文現象も周期的に起こるものもあります。
しし座流星群が2034年ごろ、皆既日食や火星大接近は2035年です。
楽しみに待ちましょう。

科学の視点から見た「音楽」はいかがでしたでしょうか?
このほかにも、ミニワークショップでスマホスピーカー作りや、ミュージアムショップで音に関連するグッズの販売を行いました。

次回の夜の科学館は、11月10日(金)テーマ『体:身体を知ろう』
ご来館、お待ちしております。
イベント名:夜の科学館
開催日:2023年10月13日(金) 毎月第2金曜日
参考資料
・NGKサイエンスサイト https://site.ngk.co.jp/lab/no194/
・『楽器の科学』フランソワ・デュポワ著( ブルーバックス, 2022)
・バイオリンの成り立ち:バイオリン誕生ストーリー – 楽器解体全書 – ヤマハ株式会社.
https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/violin/structure/.