夜の科学館:私たちの生活を考える

3月のテーマ『暮らし』
先月のテーマでもご紹介した通り、私たちの暮らしには科学が密接に関わっています。今月は、暮らしの中の身近なモノや現象を科学の視点でご紹介しました。

〇サイエンスショー「役立つ?生活の裏ワザ」

一般的に「科学」というと、覚えることや計算が多く、難しく感じてしまうこともあり、日常の生活とはなかなか結びつきません。今回は、科学を活かした「裏ワザ」という視点から科学を楽しんでみましょう。

1. 書けないボールペンを復活させる裏ワザ

ボールペンを使っていると急に書けなくなって、ちょっとイライラするということはありませんか。ボールペンは、その名の通り、ペンの先に小さなボール(金属球)がついていて、これが紙などの対象物に押し付けられて回転すると、軸の中のインクがにじみ出ます。そのインクが紙に付着することで筆記できるという仕組みです。

ペン先(チップ)の断面図
ペン先(チップ)の断面図

ボールペンが急に出なくなるのは、インクがボールの隙間に詰まってしまい、ボールが回転しなくなってしまった状態です。
では裏ワザです!
ティッシュペーパーを四つ折りにし、ペンの先端を優しくこすり付けてみてください。摩擦の大きなティッシュペーパーをこすることで、ボールに付着した汚れや詰まりがとれて、復活します。

さらに詳しくはこちらをご覧ください↓
2021年度 春の企画展「わたしにとっての文具展」図録

2. 泡の消えたビールの復活

歓送迎会も増えてきたこの季節、大人の皆さんはビールを飲む機会も多くなってきたのではないでしょうか。コップに注いだビールをしばらく置いておくと、泡がなくなりちょっと残念な気分になってしまいます。
ビールなどの炭酸飲料は、冷やした液体に圧力をかけて炭酸ガス(二酸化炭素)を溶け込ませています。開栓時やコップに注いだ時の衝撃によって、液体から炭酸ガスが外に出ようとする力が働きます。これが「シュワシュワ」としている理由です。
では、裏ワザです!
泡の消えたビールに、卓上の塩をひとつまみ加えてみてください。塩の粒が刺激となって、注いだときと同じように液体に閉じ込められた炭酸ガスが吹き出してくるので、泡が復活します。
※たくさん塩を入れると泡が沢山でてきますが、美味しくなくなります。

3. バチ!とくる静電気を防ぐ方法

空気が乾燥していると、バチ!っとくるのが静電気です。静電気はどうして起こるのでしょうか。 物質は常にプラスの電子とマイナスの電子を持っています。

電子のバランスがいい状態
電子のバランスがいい状態

2つの違う物質をこすり合わせると、一方にマイナスの電子が移動し、電子のバランスが悪くなります。マイナスが多く集まったほうがマイナスに帯電し、もう一方がプラスに帯電します。

電子のバランスが悪い状態

バランスの悪い状態を元に戻そうとするため、マイナスに帯電したものからプラス帯電したものに向けて電子が移動します。これが静電気です。
私たちは常に動くことで、身体と衣服が擦れ、身体に電気が溜まってしまいます。
そこに電気を通しやすい金属などを触ると一気に電子が移動するので、感電します。また、冬は空気が乾燥しているため、より電気が流れやすい状況にあります。

では、裏ワザです!
静電気を軽減するには、電気を通しにくいコンクリートや木のドアなどを、手のひら全体で触り、ゆっくりと電気を逃がしてあげることです。また、電気は湿気にも弱いので、加湿も効果的です。

〇ツルツル!グネグネ!いろいろな繊維

私たちの暮らしにとても身近な綿織物。
浜松の暖かく水はけの良い環境を活かし、江戸時代から綿花の栽培が盛んに行われました。そして織物産業が興り、遠州織物が誕生しました。

今回は昔ながらのシャトル織機を用いて織物を生産している古橋織布有限会社様より提供いただいた織物の繊維を電子顕微鏡で観察していきたいと思います。

【綿】

綿

生地を拡大すると、繊維の形はホースのような丸形ではなく、きしめんのように扁平でよじれています。この天然のくせによって繊維同士が絡まりやすく、糸にするのに適しています。また、繊維と繊維の間に程よい隙間が生まれ、吸水性や通気性が良いという特徴があります。

【ウール】

ウール

ウールとは何でしょうか?
生地を拡大すると、繊維に細かい縞模様がありました。これは浜松市動物園の動物たちの毛でも紹介した「キューティクル(毛小皮)」です。つまりウールは動物の毛で、原料の主流はヒツジの毛です。生地の中でも特に保温性が高く、冬物のセーターなどに使われます。

【綿+竹】

綿+竹

この生地は、綿に似ていますが、複数の繊維が合わさって一本の繊維になっているように見えます。これはバンブーコットンと呼ばれ、綿に竹の繊維を織り交ぜて作られた糸です。竹は綿に比べて栽培する際に少ない水で育ち、農薬も必要ないことから環境に優しい素材として近年注目されています。優しい色合いで、肌触りはサラサラとしています。

糸の種類や織り方を工夫することで、さまざまな肌触りの生地を生み出しています。

今年の春の特別展は、浜松の名物を電子顕微鏡で観察することで、浜松の新たな魅力を発見する「浜松ミクロ散歩」を開催します。会場では今回紹介した生地以外にも全12種類の生地を展示する予定です。
糸の一本一本が細い生地・太い生地、強くよられた糸の生地、あえて隙間を作った生地、隙間無くぴっちりと織られた生地…。古橋織布さんのシャトル織機によって作られるさまざまな質感、肌触りの生地をぜひ手にとって楽しんでみてください。

〇第二章〈星よりも、遠くへ〉

2011年3月11日14時46分、東日本大震災が発生しました。
そして、今年2024年1月1日16時10分には能登半島地震が発生しました。

日本は世界有数の地震国です。日本では地震が起こらない日はありません。日々どこかで岩盤が動き、地面が揺れています。
浜松科学館の1階に「リアルタイム地震モニター」という展示があります。
日本国内で発生する地震をリアルタイムで表示します。どのような場所で地震が起こりやすいのかが、一目瞭然です。
浜松へ大きな影響を与えると考えられる南海トラフ地震が、どのような仕組みで起こるのかを考えていただく展示となっています。

「リアルタイム地震」

今回投映した「星よりも、遠くへ」というプラネタリウム番組は、仙台市天文台が制作しました。

星よりも遠くへポスター
「震災の経験から、被災地の博物館として震災とどのように向き合うべきか、繰り返し考えてきました。 そして、震災の象徴にもなっていた星空を、被災者の手記とともに残し、伝えていく取り組みとして、プラネタリウム番組『星空とともに』を制作し、2012年3月に公開しました。その後、震災から時が過ぎ、被災地の状況や被災者の気持ちが変化する中で、第一章では伝えきれなかった星空がありました。 そこで、2018年に、『星空とともに』の第二章となる『星よりも、遠くへ』を制作しました。(中略) 第二章は、クラウドファンディングによって制作資金を集め、誕生した作品です。より多くの方にその星空をご覧いただき、震災や自然と向き合うきっかけとして頂ければ幸いです。
最後に、東日本大震災により亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りするとともに、 すべての被災者の皆さまに幸せな未来が訪れることをお祈りしております。」
(仙台市天文台ホームページより抜粋)

「震災と星空」と聞いてもピンとこない方も多いかと思います。震災によって大停電が起こりました。すると普段、夜空を照らしていた街の灯りがなくなり、満天の星が見えるようになったのです。そして、その星の光が被災された方々を勇気づけたという実話をもとに制作されたのが「星よりも、遠くへ」です。仙台市天文台の言葉と重複しますが、この番組が震災や自然と向き合うきっかけとなれば幸いです。

2023年度の夜の科学館では、さまざまなテーマ、視点から皆さんに科学についてお伝えしました。2024年度も、皆さんの好奇心をくすぐるような新しいテーマでプラネタリウムやサイエンスショーなどを行う予定です。皆様のご来館を職員一同、お待ちしております。

イベント名:夜の科学館
開催日:2023年3月8日(金) 毎月第2金曜日
参考資料:
・JMMA 日本顕微鏡工業会Webサイト
・一般財団法人 家電製品協会 省エネ家電 de スマートライフ
・仙台市天文台:https://www.sendai-astro.jp/311.html