今月の星空(2024年10月)

 浜松科学館では、浜松市天文台と共同で毎月の星空をお届けする1枚冊子「星空案内」を発行しています。本ブログで、その内容を一部公開いたします。

天文台からのコメント:10 月は秋祭りの時期ですね。私の町でも五穀豊穣に感謝する秋祭りが行われます。9月17日の中秋の名月は「芋名月」、10月15日の後の月(十三夜)は「栗名月」とも言われます。秋の恵みに感謝し、月見や星見を楽しみましょう。
(文:浜松市天文台)
浜松市天文台のWebサイト

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10月の星空案内

2024年10月 上旬:22時ごろ 中旬:21時ごろ 下旬:20時ごろ

 10月になってようやく残暑も落ち着いてきましたね。星空でも、夏から秋へバトンタッチしていく星座たちが見られます。
 高い空の少し西側にある夏の大三角は、来月から見づらくなってきます。今月のうちに眺めておきましょう。夏の大三角の、西側の星がこと座のベガ、南側の星がわし座のアルタイル、東側の星がはくちょう座のデネブです。
 夏の大三角の東側には、秋の四辺形が見えています。ペガスス座の胴体にあたる部分の4つの星です。夏の大三角をつくる3つの星に比べると、少し暗く見えます。デネブ・アルタイル・ベガは1等星であるのに対し、秋の四辺形の星たちはそれよりも暗い2等星や3等星です。街の中からだとすぐには見つからないかもしれません。目が暗い空に慣れるまで、10分~20分くらい照明やスマホを見ないで待ってみると、少しずつ見えるようになりますよ。
 そのほか、いくつか惑星も見つけやすいです。日没後、西の空には金星・南から東の空には土星が見えています。深夜から明け方まで待つと、東の空から木星と火星が姿を現します。
 さらに今年の10月は特別な天体現象も起きています。紫金山(ツーチンシャン)・アトラス彗星が地球に近づき、目で見えるかもしれません。彗星は太陽系のうんと外側からやってくる氷でできた天体です。太陽に近づくと氷が解け、周りのちりとともに彗星の尾となって見えます。彗星は明るさの変化が大きく、また予測が難しい天体です。うまくいけば、尾をなびかせた美しい姿を見せてくれるかもしれません。少しだけ、期待しておきましょう。

ケフェウス座

ケフェウス座

 古代エチオピア国王ケフェウスの姿が星座となっています。北極星(こぐま座)のすぐとなり、星が五角形に並び、アサガオの葉のような形をした星座です。北極星を時計の中心とすると、ケフェウス座はそのまわりを時計と反対回りにぐるぐると回ります。浜松では年中沈むことはありません。特に秋の星座と限らず見ることができるのですが、秋の宵になると、ケフェウス座は北極星に対してちょうど時計の12時の位置となり、北極星の上にまっすぐ立ち上がった姿になります。すぐ隣のカシオペヤ座とともに秋の星座の壮大な物語がありますので、やはり秋の星座ということになります。秋の星座物語として、ペルセウスがアンドロメダ姫を助けた話が有名です。そのアンドロメダの父がケフェウスです。物語中には、泣く泣く娘を生け贄にささげたり、ペルセウスに娘との結婚を許したりといった場面に登場します。国王ですが、物語では控えめに登場します。
 ケフェウス座δ星は「宇宙の灯台」という呼び名がついています。宇宙のはるか遠方の距離をはかる「ものさし役」として重要な役割を果たしています。明るさを変える変光星は大まかに分けて、規則正しく変光するものと、不規則に変光を繰り返すものとに分けられます。このケフェウス座δ星は、規則正しく変光を繰り返している規則変光星です。このタイプの変光星は、「ケフェウス座δ星型変光星」と呼ばれ、明るさの変化と本当の星の明るさに規則性があることが分かっています。遠くの星の距離を測る際、このタイプの変光星を見つければ、その星までの距離が分かるのです。測定の難しい遠くの銀河までの距離が分かってきたのもこの変光星によるものです。
<参考> 全天星座百科(藤井旭;河出書房新社)

金星に注目!

日暮るれば 山のは出づる 夕つづの 星とは見れど はるけきやなぞ
日が暮れると山の端から見えてくる宵の明星を欲しいと思うように、あなたを欲しいと想って見ているけれど、あの星のように遥かに遠いのはなぜだろうか

 三十六歌仙の一人、壬生忠岑(みぶのただみね)の歌です。夕づつの星というのは、宵の明星-金星のことです。このごろ日の入り後の夕焼け空の中、西の方角低いところに、明るく輝く金星が見えていますが、お気づきでしょうか?
 金星は、地球と同じように太陽の周りを回る惑星で、地球のすぐ内側を回っている内惑星です。そのため、月と同じように満ち欠けをします。また、地球と金星のあいだの距離によって見かけ上の大きさも変わります。近いときは大きく、遠いときは小さく見えます。定期的に望遠鏡で覗いて、その様子を比べてみると、満ち欠けの様子や大きさの変化がわかりますよ。
 さて、この金星、どのような星なのでしょうか。太陽から約1億820万kmの距離のところを約225日かけて公転しています。自転周期は約243日、他の惑星と自転する方向が反対向きです。なぜ反対向きで自転しているかは、まだ明らかになっていません。地球と同じように岩石の地面を持つ惑星ですが、地球とは全く違った世界が広がっています。二酸化炭素が主成分の非常に厚い雲で覆われており、温室効果がはたらくため、表面温度は460度もあります。そして空から降ってくるのは、硫酸の雨です。しかし、あまりの高温のため、地表に達する前に蒸発してしまいます。大気上層では、秒速100mもの風が吹いており、100時間弱で金星を1周してしまいます。自転周期がゆっくりなのに、なぜこのような強い風が吹いているのかはまだ解明されていません。
 謎多き金星ですが、今月6日には日没後、宵の空で細い月と近くに並んで見えます(下図参照)。この宵の明星と細い月との共演は約1か月に一度楽しめます。日ごとに金星はだんだんと高度を上げ、来年1月下旬に一番高くなります。その後再び高度を下げ、3月ごろには太陽にとても近くなり、見つけにくくなります。さらに時期が過ぎて、来年4月上旬頃からは、太陽が昇る前の空に明けの明星として楽しめるようになります。昔から人々が慣れ親しみ歌を詠んで愛でていたように、生活の中ふとした時に見上げた空の星を見て、想いを馳せるのも面白いかもしれません。

月と金星が近づくときの様子(10月~1月)
月と金星が近づくときの様子(10月~1月)
この秋から冬、金星が見えるのは夕方です。夕方、西の空に見える月は三日月のように細い月になります。ズームした様子が描いてあるのは金星です。金星は太陽の向こう側を通り過ぎ、地球の方へ近づいてくるので、大きさは大きくなっていきます。同時に、地球と太陽の間に入ってくるので、欠けている部分が大きくなり、細くなっていきます。

浜松科学館で投映中の番組

  • 月がきれいな夜に話したい3つののこと

    プラネタリウム
    「月がきれいな夜に話したい3つのこと」
  • キッズプラネタリウム
    「きらきら☆こんやのおほしさま」
  • すみっコぐらし

    大型映像
    「すみっコぐらし ひろい宇宙とオーロラのひかり」
  • 恐竜超世界

    大型映像
    「恐竜超世界」
  • 【月1回・大人限定】夜の科学館 特別投映「毒~神話の世界は毒だらけ?~」

    【月1回・大人限定】
    夜の科学館 特別投映
    「毒~神話の世界は毒だらけ?~」

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